大蔵卿 Lord High Treasurer

国王の閣僚(the Great Officers of State)の第三席。

大蔵卿は大蔵省の長である。エリザベス1世治世期に財務省 (The Exchequer) から分離、設置された。当初は大蔵卿(Lord High Treasurer)を長とし、王室の私的財産を扱う小さな組織だったが、しだいに組織の規模が大きくなり、17世紀には事実上国家財政の担当官庁となった。

17世紀以降、大蔵卿にはしばしば個人ではなく複数人が指名され、この合議体が大蔵卿委員会と呼ばれるようになった。

1714年初代シュールズベリー公チャールズ・タルボットが辞任して以降、大蔵卿は常に複数人により委員会として置かれるようになった。

現代では”第一大蔵卿”を務める英国首相、”第二大蔵卿”を務める財務相が大蔵卿委員会に含まれ、他に庶民院与党院内幹事(Government Whip)が下位の大蔵卿(大蔵政務次官:Parliamentary to the Treasury)に指名される。

初期の大蔵卿委員は年功序列によって「第一大蔵卿」「第二大蔵卿」…と番号が割り振られていたが、次第に第一大蔵卿が政府の首席とみなされるようになり、1721年のロバート・ウォルポール以後は事実上の首相となった。これ以降財政を司るのは大蔵卿委員会の次席である第二大蔵卿 (Second Lord of the Treasury) を兼務する財務大臣 (Chancellor of the Exchequer) となった。

首相 (Prime Minister) はその後も俗称にすぎなかったが、アーサー・バルフォア内閣時代の1905年になって正式な官職となった。わずかな例外を除いて首相は第一大蔵卿を兼任するのが慣例である。

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